2021-04-28公開

コミケに電子マネー決済を導入したら、参加者が笑顔で本を買ってくれた。あらためて考える「キャッシュレス」の便利さ

コミケに電子マネー決済を導入したら、参加者が笑顔で本を買ってくれた。あらためて考える「キャッシュレス」の便利さ

コミックマーケットなどの同人誌即売会で、サークルに「電子マネー決済」を導入したかざみみかぜ。さんが、導入した背景や、当日の参加者の様子を紹介します。このことをきっかけに、かざみみかぜ。さん自身もキャッシュレス生活が加速したそうです。

こんにちは。(資)自転車創業というゲーム開発会社を運営し、企画やゲームデザインやシナリオを作成している「かざみみかぜ。」と申します。趣味で同人イベント(コミックマーケットなど)にも出展しています。

ご存じの方も多いと思いますが、同人イベントは主にサークル(出展側)が来場者(買い物にくる参加者側)へ本や物を頒布する場として運用されています。

主に自作の紙媒体を直接取引するというアナログなやりとりがメインで、金銭のやりとりもほぼ現金です。

私はそんな同人イベントで、初めて「非接触方式による電子マネー決済」を導入(こちらで調べた限りでは、企業を含めて初でした)。これが大きな話題となり、多くの方にTwitterでツイートされ、WEBメディアにも取り上げていただきました。


コミケのサークルに電子マネー決済を導入したら、購入者に面白い反応が見られた

そこでこの記事では

現金でのやりとりがほぼすべてだった同人イベントでなぜ電子マネー決済を導入したのか
導入当初に電子マネー決済で本を購入してくれた参加者の様子

を紹介するとともに、

サークルにキャッシュレス決済を導入して以来、現金派だった私自身がキャッシュレス生活へとシフトしていった話

をしたいと思います。

現在、コロナ禍に応じて急速に生活スタイルの変化が起きています。キャッシュレス決済もそのひとつです。

すでにキャッシュレス決済を使っている人も多いとは思いますが、「今や同人イベントでも使えるようになっているのか」と、あらためてその便利さを感じてもらえるとうれしいです。

<目次>

・そもそも、なぜ電子マネー決済をコミケ会場に導入しようと考えたのか

・電子マネー決済を導入したら、多くの人が押し寄せて、笑顔で決済してくれた

・同人イベント会場で電子マネー決済を導入したときの双方のメリット
【1】現金のやりとりをしなくていい
【2】大量の小銭を用意しなくていい
【3】買い物のたびに財布を出す手間が省ける
【4】お金の使用歴を確認することができる
【5】値段の設定がしやすくなる

・現金派だった自分も、キャッシュレス決済派になっていった

・アフターコロナでは、衛生面において非接触決済が加速する

そもそも、なぜ電子マネー決済をコミケに導入しようと考えたのか

情報のやりとりだけならほとんどがオンラインでできるようになった現在でも、同人イベントはオフラインの場で行われています。

あえて会場へ行き、同好の士が集まる場所の空気を味わいながら内容を吟味し、その場で製作者から直接買える(場合もある)ということに価値を見出しているからこそ、現在でも多くの人が訪れるのでしょう。

こうしたアナログなやりとりが好きな人が多いからか、頒布物は紙媒体がメインです。最近は作品を専用サイトで公開し、閲覧のためのダウンロードコードを対面で頒布するというような手段も出てきていました。

しかし支払い方法に関しては、長らく現金一択でした。

そんな中、2013年の夏頃、キャッシュレス決済サービスのSquareやSTORES(旧Coiney)から販売された端末を使い、個人のサークルでクレジットカード決済を導入するサークルがいくつか出てきました。

それを見たとき、「小銭のやりとりをしなくていいのは便利そうだな」と思いました。一方で、数百円の買い物でクレジットカードを使うのは少し大げさかも……とも思いました。

ただ同時に、これが楽天EdyやSuicaのような非接触決済なら、個人情報を伏せてのやりとりができるし、何よりカードやスマホを端末にかざすだけだから早いし、スタイリッシュに支払えるのではと考えはじめました。

すでにやっている人がいるのであれば参考にしたかったのですが、当時は調べた限り、電子マネー決済を導入しているサークルはどこにも見当たりませんでした。

自分のしたいことや欲しいものをまだほかの誰もやっていない、供給してくれない……であれば、自分でそれを開拓するしかありません。同人活動というのは、そういうDIYみたいな精神で動いています。

そして同人イベントには、自作の漫画や小説を売るだけでなく、自分の持っている技術やノウハウを技術書のようにまとめて頒布する「情報評論」というジャンルがあります。

なので、サークルに電子マネー決済を導入する方法を本にすれば、導入もできるうえに本も売れるし、さらにノウハウも広めることができて一石三鳥だと考えたわけです。

しかし今まで誰もやったことがなかっただけあって、導入は困難を極めました。

まず、電子マネー決済用の端末を貸し出してくれる所を探すのも大変なら、やっと見つけた貸し出し側も個人に貸したことがないとのことだったので、双方手探りの状態で準備を進めました。


コミケのサークルに電子マネー決済を導入したら、購入者に面白い反応が見られた

最終的に動き出してから4カ月かかりましたが、ついにヤマトフィナンシャルを通じて端末を借りることができ、2013年の冬コミ(冬に開催されるコミケ)で使えるようになりました。

 

サークルに電子マネー決済を導入したら、多くの人が押し寄せて、笑顔で決済してくれた


コミケのサークルに電子マネー決済を導入したら、購入者に面白い反応が見られた

電子マネー決済を初めて導入した2013年当時のサークルの様子

初めて電子マネー決済を導入したのは、2013年12月30日のコミックマーケット。最初はいつも買いに来てくれている方や、事前のTwitterの告知を見て「コミケで電子マネー決済ができるのは面白そう」と思ってくれた方がぽつぽつと来てくれる程度でした。

しかしそのうちのひとりが決済の様子をTwitterに投稿したところ、多くの方にリツイートされたのです。

その後すぐさまニュースサイトに掲載され、さらに別のサークルに並んでいた方が待機中にそのニュースを見て「コミケで電子マネー決済をやってみたい」と考え、私のサークルまで買いに来てくれるという連鎖が発生しました。

非日常的な空間であるコミケ会場で、日常的に使っている電子マネー決済を利用できるという状況が、来場者の興味をくすぐったようです。

しかも借りた端末は、交通系ICカードだけでなく、楽天Edy、nanaco、WAONとおおよその非接触決済なら対応可能なもの。

決済ごとにコミケ会場で楽天Edyがシャリーンと鳴り、nanacoがセブン-イレブンでないのに使え、イオンじゃないのにWAONの犬の鳴き声が聞こえるという状況も面白さに拍車を掛けました。

日常と非日常が繋がったような感覚に、決済してくれる人はとにかく笑顔でした。決済しようとしたら残高が足りず、わざわざチャージしに行ってくれた方までいました。

決済してくれた方は後でそれをSNSに投稿してネタにし、ほかのサークルからは自分も電子マネー決済を導入したい、と声を上げる方がたくさんいました。

無論そのとき頒布した本は「電子マネー決済端末をコミケに導入する方法」を解説した内容だったので、実際に本を参考に導入を試みた方もいました。

最後までみなさんを笑顔にしながら、イベント終了後に端末の締め処理をしたところ、とんでもない長さのレシートが排出されました。


コミケのサークルに電子マネー決済を導入したら、購入者に面白い反応が見られた

写真左の輪ゴムで留めたものが、端末から出てきた売上レシート

この盛況ぶりを見て、同人イベントで電子マネー決済を導入する人はどんどん増えていき、いつか現金決済を超える時がくるかもしれないという予感を抱きました。

 

同人イベント会場で電子マネー決済を導入したときの、売る側・買う側のメリット

このように非日常な同人イベントの場で、日常的に買い物をするときに使う電子マネー決済を紛れ込ませてみたわけですが、実際にやってみるとやはり売る側・買う側どちらにもメリットがあるということを実感できました。

ここからは、大きく便利だと感じた5つのポイントについて紹介していきます。

 

【1】現金のやりとりをしなくていい

同人イベント会場でサークル側がキャッシュレス決済を導入するメリットは、まず当たり前ですがやはり現金のやりとりをする必要がなくなることに尽きます。

まず売る側としては1日何十回、サークルによっては何百回とお金のやりとりをしますが、代金を間違えないようにするのは結構気を遣います。電子決済でも当然代金の入力に気は遣いますが、お釣りは発生しません。

これは買う側も同じで、さまざまなサークルで買い物をするたびに、小銭の数は間違っていないかどうか確認する手間が省けます。

 

【2】大量の小銭を用意しなくていい

売る側に立つと時折発生するのが、朝一番に連続で10,000円札を出されることです。そうすると「お釣りが不足しています!」という立て札がテーブルの上に載ることになります。

それを回避するためには100円玉の棒を銀行で事前に調達する必要が出てくるのですが、キャッシュレス決済なら立て札も100円棒も用意する必要がなくなります。

買う側としても逆に大量の小銭を用意しなくてよく、500円の本に万札を渡して9,500円のお釣りをもらう微妙な気まずさから開放されます。

双方ともに小銭の準備と、その意外と馬鹿にならない重さから開放されるのは、大きなメリットのはずです。

 

【3】買い物のたびに財布を出す手間が省ける

財布を出す手間が省けるというのは、買う側にとって大きなメリットです。

現金でのやりとりだと、財布を出して開き、ぴったりの額が払えるか確認し、そうでなければ多めに出し、お釣りをもらい、確認して財布にしまう……という一連の流れが必要になります。

電子マネー決済だと、「値段を確認した後に、持っているICカードかスマホをかざすだけで済む」という利便性があります。

イベントに期待をしている程、会場でたくさん本やグッズを買うことになるでしょう。

スーパーなどでいろいろな品物をかごに入れ、最後に一回お金のやりとりをするだけならまだいいのですが、同人イベントはフリーマーケットなどと同じく、小さいお店がたくさん出ている状態なので、決済は個別です。

そのたびに財布からお金を出すという一連のやりとりをすると考えれば、手間や時間も馬鹿にできないものになっていきます。人気のサークルに並んで後ろにまだたくさんの人が並んでいるのであれば、1秒でも決済の時間を短くしたくなるものです。

財布だとどうしても両手を使うことになりますが、持っているスマホをかざすだけなら片手で済むので、反対の手に荷物を持ったままで済むというのもメリットです。

 

【4】お金の使用歴を確認することができる


コミケのサークルに電子マネー決済を導入したら、購入者に面白い反応が見られた

ある日の同人イベントの売り上げ

売る側の場合、最終的な売り上げは端末に記録されているので、締めの作業でお金を数える作業は不要です。


コミケのサークルに電子マネー決済を導入したら、購入者に面白い反応が見られた

買ったものは、このように履歴が残る

買う側の場合、例え記憶をなくすほど散財してたとしても、後からその履歴を見ることで記憶を取り戻すことは可能です。


【5】値段の設定がしやすくなる

これは同人イベント特有かつ売る側の話になりますが、頒布物にはお釣りが出ないように500円単位で値段付けをすることがままあります。

しかし「500円単位」を遵守することで、頒布する値段が製作にかけたコストよりも高過ぎたり安過ぎたりする場合があります。

ところが、キャッシュレス決済ならお釣りのことを考えず自由に値段設定ができるため、かけたコストをふまえて330円や420円といった中途半端な値段を付けることも可能です。

初めて電子マネー決済を導入したときは「中途半端な値段でも電子マネー決済だから支払いやすい」ことを実感してもらうため、あえて電子マネー専売で、かつ98円という端数で本を頒布してみました。おかげでたくさん売れたのに元が取れませんでしたが。

 

***

 

前述の通り、同人イベントは基本アナログな世界です。現金でこれまで回ってきたのだから、今さらキャッシュレス決済なんていらないという人もいると思います。

たしかに同人イベントには、いろいろな所でいろいろな人が試行錯誤で積み重ねてきたノウハウがあります。

上述の500円単位のやりとりが多いというのもそのノウハウのひとつですが、それゆえに、500円単位でないものが売りにくいという難しさもあります。

その難しさを埋めていけるのが、デジタルの利点であり、キャッシュレス決済の利点のひとつだと思っています。

そして先日、コミケが公式のQRコード決済の導入を発表しました。アナログな場というイメージが強いコミケでさえ、一角が変わりつつあります。下準備は整いつつあります。あとは人の側が対応するかどうかの話だと思っています。

 

現金派だった自分も、キャッシュレス決済派になっていった

ここまでキャッシュレスのメリットについて語ってきましたが、実は自分自身、最初は現金派でした。

しかし、サークルでの電子マネー決済導入を経て、その後に自分が怪我をして一時的に片手しか使えなくなった時から、完全にキャッシュレス決済派になりました。

自分でも切り替えてみて気づいたメリットはたくさんありました。その中からいくつか挙げていきます。

<キャッシュレス生活で感じたメリット>

・スマホを片手でかざすだけなので、両手を使う必要がない
・現金をあまり使わないので、財布を落とすときのリスクが減る
・支払いの時間が短くなる

まずは、同人イベント会場で出展側から見えていたメリットが、図らずも自分の怪我によって病院から帰るタクシーで実感するということになりました。片手で決済が済むというのはとても助かりました。

また、これまでは銀行へ行く回数を減らすためにお金を多めに引き出していたので、財布をなくしたり盗まれたりしたらどうしようという心配がありました。

しかし、キャッシュレス生活をしているとそもそも現金を持ち歩くことがなくなり、お金を落とすリスクも減りました。

無論、カードやスマートフォンをなくしたり盗まれたりする心配はありますが、デジタルで支払い経緯が残るからこそ、不正使用時の保証もあります。銀行やATMに行くのも、今では数カ月に1度あるかないかに変わりました。

そして、キャッシュレスによって支払い時間が短くなり、お金のやりとりのミスも減るというのは大きなメリットです。これも同人イベントで感じたことを日常生活でも体験した形です。

今では、電子マネーにチャージするときもスマホに取り込んだクレジットカードで決済しているので、現金はほぼ使っていません。

ひとつひとつは小さな利便性の向上であり、現金を使ったそれまでのやり方でも同じことはできます。

しかしそれが積み重なり、余計なことに手間と頭を使わなくて済む電子化のメリットに気づいたら、もう前の生活に戻りたいとは思わなくなります。

 

アフターコロナでは、衛生面においても非接触決済が加速する

新型コロナウイルスの影響で、2020年のコミケはすべて中止になりました。次回は2021年5月に開催される予定でしたが、それも延期になってしまいました。

制限された人数以下の小さなイベントは行えるようになってきましたが、まだしばらく同人活動は冬の時代が続きそうです。

弊サークルの目的のひとつである、「同人イベントに電子マネーを紛れ込ませる」という活動も2020年は全く行えませんでした。しかし、コロナが収まっていけば、再びサークル活動を通じて電子マネー決済を推進していくつもりです。

今後は「便利」という以外に、衛生面からも、電子マネー決済を含めた非接触決済にシフトしていくことになるでしょう。アナログな同人イベントの場でもじわじわと増えつつあるので、世間のあちこちで導入は加速していくと思われます。

ただ、ほとんどのキャッシュレス決済に電気と通信が必要である以上、すべてを置き換えることは難しいです。私も常にお金の入った財布は持ち歩いています。

しかしそれは徐々にキャッシュレス決済が使えないときの「最後の手段」となっていくはずです。

すでにキャッシュレス決済に手を出してはいるけど、積極的にあちこちで使うことはしていないという人も多いと思います。

そういった方は、今まで使ったことがなかった場所であえてキャッシュレス決済を使ってみて、普段の現金払いとの違いを体験してみると面白いと思います。

私も、最初は「便利がどうこうというよりも、面白そう」からはじめました。

この記事を書いた人かざみみかぜ。

(資)自転車創業代表。ゲームソフトの企画、設定、シナリオ、ゲームデザイン、スクリプトを担当。VR専用ゲーム『星の欠片の物語』、ゲーム性重視のノベルゲーム『あの、素晴らしい  をもう一度』『ロストカラーズ』『ノベルゲームの枠組みを変えるノベルゲーム。』などを手掛ける。個人では『サークル:自転車操業』を運営し、趣味的活動を行う。

Twitter:@kazamimi
Web:『自転車創業』

編集:はてな編集部

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